一般検査標本集

上皮細胞系と円柱類

症例1(尿沈渣)
1-A (無染色×400)


1-B (SM染色×400)


症例2(尿沈渣)
2-A (無染色×400)


2-B (SM染色×400)


尿路系疾患を検索するうえで、尿沈渣の上皮細胞を正確に分類することは異型細胞の判定につながり極めて重要である。また、円柱も腎・尿細管の病態や障害の程度を把握することができ臨床的に意義のある成分である。

症例1-A,Bは、紡錘状の尿細管上皮細胞である。症例2-A,Bは、細胞辺縁が鋸歯状~類円形上の尿細管上皮細胞が基質内(尿細管上皮細胞から分泌されるTamm-Horsfallムコ蛋白と少量の血漿蛋白がゲル状に凝固沈殿したもの)に取り込まれた上皮円柱である。
尿細管上皮細胞の形態的特徴は、有尾状~紡錘状を示し、細胞質は薄く、表面構造は均質状でシワやヒダが見られる細胞や(1-A,B)、 細胞辺縁が鋸歯状~類円形状で、細胞質は細顆粒状、スポンジ状を示し、核は単核で濃縮し凝集しておりやや偏在性を示す細胞など(2-A,B 円柱内尿細管上皮細胞)さまざまな形態を示す。
尿細管上皮細胞の尿中への出現頻度と円柱の関係は重要である。尿細管上皮細胞 >30/HPFでほぼ100%上皮円柱が見られる。すなわち、円柱内の上皮細胞及び円柱外で同様な形態を示す細胞は、尿細管上皮細胞由来と同定できる。(日臨技、尿沈渣検査法2000を参照)

クリプトスポリジウム(オーシスト)

症例3(糞便)
3-A (抗酸染色×1000)


3-B (抗酸染色×1000)


人獣共通感染症で、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ネズミなどにも広く自然感染がみられ、人への感染源になる。
オーシストは直径4.5~5.5μmの類円形で、内部にはバナナ状をした4個のスポロゾイドと顆粒の集塊からなる残体とが包蔵されている。
感染はオーシストで汚染された水、生野菜、ペットとの接触などからの「糞便―経口感染」である。集団発生例も数多く報告され、感染力も強く、数個の経口摂取で感染・発症する。水溶性の激しい下痢と腹痛を主徴とする。潜伏期間は5~10日、感染症新法4類に分類される。また、有効な治療法もなく、自然治癒するが、入院加療を要することもある。予防は、手洗いの励行、家畜、ペットとの接触した後は気をつける。川や池の生水を飲まない。
検査法は糞便からオーシストを鏡検で検出する。
簡易迅速蔗糖浮遊法、蔗糖遠心沈殿浮遊法、抗酸染色法、直接蛍光抗体法など。
(参考文献 井関基弘、他:技術解説「クリプトスポリジウム症・サイクロスポーラ症」臨床検査、42:541-546、1998)

ヒゼンダ二(疥癬)と虫卵

症例4(表皮)
4-A (無染色×200)


4-B (無染色×200)


疥癬は、人の皮膚に寄生するヒゼンダ二(疥癬虫)が皮膚の角層内で繁殖して生じる非常にかゆい皮膚病で人から人へ感染する皮膚感染症の一つである。
感染経路は人から人へと直接感染する場合と、疥癬患者が使用した寝具類を知らずに使用して感染する場合とが考えられる。公共の共同施設での感染や家族内での感染が主となっているが、特に老人病院、老人ホーム、介護施設などでは、抵抗力の低下なども手伝い、集団発生をすることがある。
症状は感染初期の場合、成虫が少ないため約一ヶ月の無症状期を経て症状が出現する。
最初はヘソの周りや太ももなどの皮膚に赤い発疹が現れ、やがて腕の内側、脇の下、外陰部など、やわらかいところを中心に発疹が拡がりかゆみが強く、夜など寝入りばなに特に強くかゆくなる。
診断と治療は発疹の鏡検によるヒゼンダ二及び虫卵の確認、硫黄、安息香酸ベンジル、クロタミンなどの塗布、ムトウハップ。
(参考文献 家畜寄生虫学、獣医臨床寄生虫学、疥癬はこわくない: 大滝倫子 / 牧上久仁子 / 関なおみ、医学書院/書籍)

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